おすすめの参考書① 数学編 入試問題演習から分野別・目的別の対策まで
僕は普段、地方の小規模な塾で、大学受験生を対象に数学はじめとした理系科目の指導にあたっています。その中でよく聞かれるのが「どんな問題集をやったらいいですか」、あるいは「何をしたらいいですか」というアバウトな質問も。
これらの指導経験から、「オススメの問題集一覧」はなくてはならないもの、という考えに至りました。しかし、ただただ解けばいいだけではない。目的をもって取り組んでほしい、それを講義の中で逐一解説するのは、時間の都合で難しい。
ここではオススメの参考書を紹介します。あわせてWebの特性を活用してリンクを掲載し、それぞれの問題集の使い方について徹底的に解説します。初回の今回は、受験数学のおすすめ問題集です。
問題演習① 入試問題初級〜中級編
入試問題演習の参考書として僕がオススメするのは「チョイス新標準問題集」です。数学ⅠA・Ⅱ・B・Ⅲの4冊に分かれています。旧帝大を目指す受験生以外は、この「チョイス新標準問題集」をマスターすれば十分でしょう。
使い方は、
全問題を5回、最低でも3回解く
という使い方を想定しています。数学は暗記科目ではありませんが、最低限、基礎となる問題を覚えるまでやり込まなくては理解ができないのです。
チョイス新標準問題集は標準〜やや難程度の、中堅私大から国公立大(旧帝大除く)程度の入試問題で構成されています。比較的平易な問題から、一部にはやや難の問題まで掲載されています。問題はどれも確実に押さえておきたい典型的な問題です。この「チョイス新標準問題集」に掲載されている問題の考え方を組み合わせて、入試問題を解いていくことになります。
解説はスタンダードな考え方が採用されており、取り組みやすいのも特徴です。悪く言えば特色がない。でも、こういった考え方をきっちりマスターするのが、数学の実力を伸ばす近道なのです。
全てが990円という、1,000円を切る問題集であることもGoodなポイントです(あくまでここでは、値段を理由に選んだわけではありません)。
問題演習② 入試問題中級〜上級
次に紹介するのは「良問のプラチカ」です。こちらも河合出版が出版する問題集で、実際に使っている人も多いベストセラーです。
ただしこの「良問のプラチカ」は、旧帝大+α(東工大・一橋大・慶應大)の『難関10大学』を目指す受験生、そして医学部医学科を目指す受験生以外には少し背伸びしすぎのように感じます。あくまで、難関大学を目指す受験生が使えばいい問題集です。
数学ⅠAⅡBに関しては「文系数学」「理系数学」と分かれています。数学Ⅲは別で用意されています。どれも、問題部分より解説部分の方が圧倒的に分厚く、懇切丁寧な解説が魅力です。
ただし何度も繰り返しますが、採用されている問題は難関大の問題が中心、やや難〜難の問題ばかりです。中堅国公立大(旧帝大を除く、都道府県庁所在地の名前がつくような大学)を目指す受験生が取り組み、失敗する様子を何度も見てきました。中堅国公立大の受験生には背伸びしていると言わざるを得ない問題集です。



目的別対策問題集
続いて、目的別の対策問題集です。
計算力向上の対策問題集
まずは計算力です。
数学の実力、特に共通テストでは計算力が問われます。共通テストの数学は時間に対して問題量が多く、数学が極めて得意な生徒や超進学校の生徒を除いてほとんどの生徒が時間で苦労します。
そんな受験生にオススメするのが「鉄緑会 基礎力完成数学Ⅰ・A+Ⅱ・B」です。この問題集では、計算力を向上させるための実用的で「テクニック」的なものに偏らない技が解説で紹介されている上、問題も1講10分程度の目安が掲載されており、わかりやすいです。
計算力向上に役立つ問題集ではありますが、計算力は普段の問題集で向上させるのが効率的でもあります。僕は普段、受験生の指導では「普段問題を解くときに、時間制限を設けてとく」ことをオススメしています。学校の問題集で結構です。ただし、どうしても計算力が足りない人はこの問題集をやってみてもいいかもしれません。
極めて苦手な分野がある場合の問題集
よく受ける相談として「数学Ⅲが極めて苦手だ」だとか、「数学Aが極めて苦手だ」という相談があります。人によって苦手・得意は異なりますが、何かしら苦手な分野を抱えている受験生も多いでしょう。
そんな受験生にオススメするのが「大学入試短期集中ゼミ」シリーズです。この問題集は入試対策の問題集というよりは基礎的な問題集です。学校の定期テストレベルの対策にもなります。
極めて苦手な分野がある場合、この「大学入試短期集中ゼミ」を使うといいでしょう。ここでは数学Ⅲのリンクを掲載しますが、他の分野も発売されています。
最初の一手がわからない どう着想点を得るか
難関大の入試問題(主に難関10大学以上)になると、問題を見たときに「どこから着想を得ればいいかわからない」ことがあります。その対策になるのがこの問題集です。
僕自身も、この問題集の考え方に則った講義を、冬期講習で毎年開講しています(もちろん、問題は1題たりともこの問題集に掲載されているものは使っていません)。今年で4回目となりますが、好評です。
数学の全分野をマスターした後で、総仕上げとして最適な問題集です。
最新の入試問題研究
入試は基本的に毎年行われます。最新の入試問題の研究に使えるのがこの「大学入試攻略数学問題集」です。この問題集は、毎年、河合塾講師が次年度以降の教材作成のために入試問題の分析結果を持ち寄り、作成している問題集です。毎年7月に発売され、最新の入試問題が羅列されているのではなく受験生でも取り組める配置にし、丁寧な解説が加えられています。
時間に限りのある受験生が全国津々浦々の入試問題を解いて研究するのはもちろん不可能に近いです。しかし、この問題集を使えば、河合塾講師があらかじめ選んだ問題を解くことができるため効率がいいです。毎年、最新の入試問題で発売されますが、毎年ハイクオリティな問題集に仕上がっているためここで紹介します。
ただし、問題は中堅私大〜旧帝大、そして東大・京大まで幅広いため、必要に応じて解くのがオススメです(講師が少ない地方の弱小予備校で、あらゆるレベルの受験生に対して指導する僕はありがたく使わせていただいています)。
分野別対策問題集・参考書
最後に分野別でオススメできる問題集です。
確率
まずは確率です。数学Aの分野で、苦手な人が多い分野です。
僕が個人的にオススメするのが、安田亨先生が執筆された「ハッとめざめる確率」です。東大レベルにも対応した問題集のため、やや難易度は高めです。
確率の基礎的な考え方が書かれています。指導している予備校で、コロナ禍において解説テキストの執筆に迫られた際、この参考書をかなり参考にして解説を書きました。その解説については同僚の講師から「確率の基礎が簡潔にかつ誤魔化しなくまとめられている」と大好評でした。
比較的難しい問題集ではありますが、誤魔化しなく基礎を徹底解説した参考書です。
整数問題
整数問題も数学Aで苦手な人が多い分野です。まず、オススメするのが先ほどの「ハッとめざめる確率」の著者・安田亨先生が書かれた「2週間で完成!整数問題」です。整数問題を
- 剰余で分類する
- 因数分解の活用
- 不等式ではさむ
の3通りに分類し、点と点を線で結ぶようにしてきた、と「はじめに」で書かれている通り、基礎的な考え方に帰着する解説の仕方です。整数問題の考え方がよくわかります。
テクニックについて詳しく解説しているのが「整数問題が面白いほどとける本」です。安田先生の問題集と比べてページ数が多く、丁寧に解説されています。数学が苦手な人はこちらがオススメです。

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