高校数学Ⅰまとめノート No.3 和集合と共通部分、集合の計算則
今回は「和集合」と「共通部分」という部分。ここも実は意外と重要なのでしっかり確認していきましょう。
和集合と共通部分
\(A\)と\(B\)の2つの集合を考える。\(A\)もしくは\(B\)のいずれかに属する元(要素)全体からなる集合を和集合といい、\(A\cup B\)と表す。
\(A\cup B=\{x|x\in Aまたはx\in B\}\)
2つの集合\(A, B\)の両方に属する要素全体の集合を\(A\)と\(B\)の共通部分といい, \(A\cap B\)と表す。
\(A\cap B=\{x|x\in Aかつx\in B\}\)
ここで扱っている「和集合」「共通部分」という単語自体はあまり入試では見ません。ただ、\(A\cup B,~A\cap B\)という表現はとてもよく出てきます。
特にセンター試験ではほぼ毎年といっていいほど出題されていました。共通テストでも出てくることになるでしょう。
これらの記号は区別して覚えておいてください。
集合の計算則
以下の計算規則が成り立つ。
- \(A\cup B=B\cup A,~A\cap B=B\cap A\)(交換法則)
- \( (A\cup B)\cup C=A\cup(B\cup C)\),\( (A\cap B)\cap C=A\cap(B\cap C)\) (結合法則)
- \(A\cap (B\cup C)=(A\cap B) \cup (A\cap C)\), \(A\cup (B\cap C)=(A\cup B)\cap(A\cup C)\) (分配法則)
- \( \overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B},~\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}\) (ド・モルガンの法則)
なんだか先ほどからあまり入試では見ない、というものが多いですがここも入試ではあまり見ません。見ませんというと少し違いますね。実際意識しないというほうが正しいかと思います。
交換法則や結合法則、分配法則は実はよく使うのですが、意識はしません。なんででしょう?
これは日本語に直して考えてみれば、意識するまでもないということが分かると思います。こういうことを丁寧に書いているサイトや参考書はなかなか珍しいと思うので、ここで丁寧に一つづつ見ていきましょう。
交換法則
まず、交換法則
\(A\cup B=B\cup A,~A\cap B=B\cap A\)
「AかつB」を「BかつA」に言い換えられますか?これらの2つは意味が異なりますか?日本語ですから皆さん分かると思います、この2つの表現は同じです。交換法則ってのはこれだけです。
ほら、わざわざ覚えなくても大丈夫ですよね?ちょっと雑談しておきましょうか。
この先、数学Bでベクトルというものを勉強します。\(\vec{A}\)って、矢印を使って書くんです。このベクトルには掛け算が2つあるんですが(厳密には、高校で勉強する内積はベクトルの掛け算ではありません。ここはまた後ほど数学Bの解説で)、このうち大学に入ってから詳しく扱う外積(ベクトル積)というものは順番を変えると別のものになってしまいます。
\( \vec{A}\times\vec{B}=-\vec{B}\times\vec{A}\)
となってしまいます。順番を変えると\(\times(-1)\)(マイナス1倍)されてしまうんですよね。ここではあえて「こういうことはないよ」と書いたつもりです。
さて、無駄話はこの辺にして話を戻しましょうか。
結合法則
続いて結合法則
\( (A\cup B)\cup C=A\cup(B\cup C)\)
も確認してみましょう。
まず左辺を日本語に変えてみましょう。「AまたはBに含まれるもの、もしくはCに含まれるもの」。言い換えると、「AかBかCに含まれるもの」となりますよね。ここまでは大丈夫でしょうか。続いて右辺。「Aに含まれるもの、もしくはBかCに含まれるもの」。言い換えると、「AかBかCに含まれるもの」。先ほどと同じになりました。ということで等式が成り立ちます。これも特別覚える必要はなさそう。
分配法則
さあ、続いて分配法則
\(A\cap (B\cup C)=(A\cap B) \cup (A\cap C)\)
に行きましょう。
まず、左辺。「Aに含まれていて、かつBかCのどちらかに含まれるもの」。つまり、「前提としてAには含まれていなくてはいけない、そのうえでBかCのどちらかに含まれていればOK」と言い換えられます。
次、右辺。「AとBの両方に含まれているものか、AとCの両方に含まれているもの」と言い換えられます。前半の「AとBの両方に含まれている」をとっても、後半の「AとCの両方に含まれている」をとってもどのみち「Aには含まれていなければならない」ことになりますが、「BとCはどちらかに含まれていればよい」ということになります。これもこう考えれば理解できますね。
ド・モルガンの法則
長くなってきました。疲れてきましたね。あとちょっと頑張りましょう。最後に、ド・モルガンの法則
\( \overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}\)
要領は同じなのでサッといきます。まず左辺。「『AまたはB』ではない」、つまり、「AではないしBでもない」ということ。続いて右辺。「AではなくてかつBではない」、つまり、「AではないしBでもない」ということですから、同じ意味ですね。
このように、それぞれの法則は日本語に直せばそんなに難しくありません。
記号で覚えようとすると大変ですから、日本語で理解できるようにすることをオススメします。一番最後の、ド・モルガンの法則、これはよく使います。センター試験でも頻繁に使いましたので、今後の共通テストでも当然使うことになるでしょうからパッと出てくるようにしておいてください。
集合の要素の個数と視覚化
(1)要素の個数
集合Aの要素の個数が有限の場合、要素の個数を\(n(A)\)で表す。大学の本では\(\#(A)\)という記号を使ったものもあり、読み方はいずれもナンバーである。
(2)要素の視覚化
要素を視覚化するにはベン図が有効である。
(1)は単に書き方。知っておきましょう。以上。
(2)はベン図について。これは結構よく使います。数学Aの場合の数や確率などでも使えます。今はちょっとこの図の有用性が分からないと思いますが、問題を解く中で使ってみてください。状況を整理するのに役立ちます。
とある知り合いが就活のための勉強をしていました。企業の採用の際に共通のテストとして使われる「SPI」という試験の対策です。その問題集を少しのぞき見してたんですが、このベン図とかを使った問題がありました。就職の際にもお目にかかる図なんですね。僕も受験さえ終わったらこのベン図ともサヨナラだと思っていました。
カルノー図
ベン図では3つの集合までしか表せないが、カルノー図は4つの集合を視覚化できる。しかし、めったにお目にかからないのが現実である。
有限集合の要素の個数
有限集合\(A,B,C\)の要素の個数\(n(A),~n(B),~n(C)\)に対して、次が成り立つ。
\(n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)\)\(n(\overline{A})=n(U)-n(A)\)
個数の話です。僕も解説作成につかれてきたのでここは解説は軽く行きたいと思います。嘘です、ここは解説で理解するより、自分で手を動かしてベン図を書いてもらうほうがいいと思うからです。
一応、一番最初の\(n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)\)だけ解説をしておきましょう。
「AまたはBに含まれるもの」の個数、これはいくつでしょう。まず、Aに含まれるもとBに含まれるものの個数を足します。さてこれで終わりですか?
いいえ、終わりではありません。
これでは、「AとBの両方に含まれるもの」を2回足してしまっていますよね。なので、2回足してしまった分、そのうち1回分だけ引いてやりましょう。「AかつB」の個数を引けばいいのです。これで終わりですか?
え?って思った人、その通り。これで終わりです(笑)。こうやって日本語で説明しましたが、それより自分でベン図を描いてみた方が分かりやすいと思うので、実際に描いてみてくださいね。
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