【解答解説・共通テスト対策化学基礎】センター過去問 2020本試験 第1問
必要があれば,原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 N 14 O 16 Na 23
第1問 次の問い(問1~7)に答えよ。(配点 25)
問1 原子およびイオンの電子配置に関する記述として誤りを含むものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 1
① 炭素原子CのK殻には,2個の電子が入っている。
② 硫黄原子Sは,6個の価電子をもつ。
③ ナトリウムイオンNa+の電子配置は,フッ化物イオンF-の電子配置と同じである。
④ 窒素原子Nの最外殻電子の数は,リン原子Pの最外殻電子の数と異なる。
正解は④。
④:最外殻電子の数を比べるには、第何族かを考えればよい。リンも窒素も、ともに14族(同族元素)なので、最外殻電子数は同じ。窒素原子の最外殻電子の数は3、リン原子の最外殻電子の数は3で同じ。なお、窒素原子の最外殻はL殻、リン原子の最外殻はM殻。
①:炭素原子は第2周期(つまりL殻が最外殻)の14族元素。すなわち、最外殻はL殻。ということは、それより内側にあるK殻は原則として埋まっており、2個の電子が入っている。
②:硫黄は、第3周期16族元素。第3周期の中では6個目の原子であるから、6個の価電子をもっている。なお、最外殻はM殻。
③:ナトリウムイオン、フッ化物イオンともにネオン型の電子配置をしている。ネオン型の電子配置は最外殻がL殻で閉殻。ナトリウム原子はM殻に1つだけ電子があるのでそれを放出し、フッ素原子はL殻に原子が7個あり1個だけ足りないので電子を受け取ってネオン型配置になる。
問2 周期表の1~18族・第1~第5周期までの概略を図1に示した。図中の太枠で囲んだ領域ア~クに関する記述として誤りを含むものを,下の①~⑤のうちから一つ選べ。 2

① アとイとウは,すべて典型元素である。
② エは,すべて遷移元素である。
③ オは,すべて遷移元素である。
④ カは,すべて典型元素である。
⑤ キとクは,すべて典型元素である。
正解は③。オの部分は典型元素となる。
ここで周期表の重要な事項を確認しておく。
- アルカリ金属元素:イの部分
- アルカリ土類金属元素:ウの部分
- 典型元素:イ(アルカリ金属)・ウ(アルカリ土類金属)・オ〜クの部分
- 遷移元素:エの部分
問3 分子全体として極性がない分子を,次の①~⑤のうちから二つ選べ。ただし,解答の順序は問わない。 3 ・ 4
① 水H2O ② 二酸化炭素CO2 ③ アンモニアNH3
④ エタノールC2H5OH ⑤ メタンCH4
正解は②、⑤。二酸化炭素は2つの二重結合があり、それが直線形構造となっており極性が打ち消しあっている。メタンは正四面体形構造で、正四面体の中心から各頂点へ向かう方向へ結合が伸びている。そのため、結合の極性がすべて打ち消し合い、分子全体として極性がない(ただし、“結合”には極性がある)。
①の水分子は折線型となっているので極性が打ち消されない。③アンモニアは、正四面体型構造のうち、1つの頂点に水素原子がない状態(正四面体型構造の中心に窒素原子があり、4つの頂点のうち3箇所に水素原子がある状態)。そのため、極性が打ち消しあわず、分子全体としても極性を持つことになる。④のエタノールは、ヒドロキシ基(-OH)と呼ばれる構造があり、ここの部分が極性をもつ。そのため、分子全体としても極性をもつ。
問4 純物質の状態に関する記述として誤りを含むものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 5
① 液体では,沸点以下でも液面から蒸発がおこる。
② 気体から液体を経ることなく直接固体へ変化する物質は存在しない。
③ 気体では,一定温度であっても,空間を飛びまわる速さが速い分子や遅い分子がある。
④ 分子結晶では,分子の位置はほぼ固定されているが,分子は常温でも常に熱運動(振動)をしている。
正解は②。気体から直接個体へ変化することもある。例えば、ヨウ素などが挙げられる。
③について。一定温度の気体であっても分子ごとに空間を飛び回る速さは違う(速さの分布は“マックスウェル分布”と呼ばれ、大学の統計力学等で詳しく学ぶ)。分子が飛び回る速さの平均値によって温度などが決まる。
④について。分子は必ず微小な振動をしている。全く振動をしていないときの温度を絶対零度といい、セルシウス温度で表すと約-237℃である。しかし、この温度は実現できない。
問5 水道水を蒸留するために,次の手順Ⅰ・Ⅱにより,図2のように装置を組み立てた。
手順Ⅰ 蒸留で得られる成分の沸点を正しく確認するために,穴をあけたゴム栓に通した温度計を枝付きフラスコに取り付け,温度計の下端部(球部)の位置を調節した。
手順Ⅱ 留出液(蒸留水)を得るために,受け器の三角フラスコを持ち上げてアダプターの先端を差し込んで,三角フラスコの下に台を置いた。

手順Ⅰに関する注意点(ア~ウ)および手順Ⅱに関する注意点(エ・オ)について,最も適当なものの組合せを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。 6
〔手順Ⅰに関する注意点〕
ア 温度計の下端部を,水道水の中に差し込む。
イ 温度計の下端部を,水道水の液面にできるだけ近づける。
ウ 温度計の下端部を,枝付きフラスコの枝の付け根の高さに合わせる。
〔手順Ⅱに関する注意点〕
エ アダプターと三角フラスコの間を,アルミニウム箔で覆うが密閉はしない。
オ アダプターの先端を穴のあいたゴム栓に通し,三角フラスコに差し込んで密閉する。
手順Ⅰに関する注意点 | 手順Ⅱに関する注意点 | |
① | ア | エ |
② | ア | オ |
③ | イ | エ |
④ | イ | オ |
⑤ | ウ | エ |
⑥ | ウ | オ |
正解は⑤。
〔手順Ⅰに関する注意点〕について。蒸気の温度を正確に測るためには、温度計の温度を図る部分(下端部に液体が溜まっている部分)は枝つきフラスコの枝の付け根の高さに合わせる。こうすることで、ガスバーナーによる温度の影響を最小限とし、リービッヒ冷却管へと向かっていく水蒸気の温度を計測することができる。したがって、ウが正しい。
〔手順Ⅱに関する注意点〕について。三角フラスコとアダプターの間を密閉すると、爆発する危険がある。通常、液体から気体へ変化する際、体積が大幅に増加する。おおよそ1700倍にもなるため、密閉していると破裂して危険である。したがって、エが正しい。
問6 ある量の塩化カルシウムCaCl2と臭化カルシウムCaBr2を完全に溶かした水溶液に,十分な量の硫酸ナトリウムNa2SO4水溶液を加えると8.6gの硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2O(式量172)の沈殿が得られた。水溶液中の臭化物イオンの物質量が0.024molであったとすると,溶かしたCaCl2の物質量は何molか。最も適当な数値を,次の①~⑤のうちから一つ選べ。ただし,水溶液中のカルシウムイオンはすべてCaSO4・2H2Oとして沈殿したものとする。 7 mol
① 0.002 ② 0.019 ③ 0.026 ④ 0.038 ⑤ 0.051
正解は④。CaCl2をx mol溶解させたとする。水溶液中の総カルシウムイオンの物質量に注目して方程式を立てる。
硫酸カルシウム8.6gは、8.6/172(mol)である。つまり、8.6/172(mol)のカルシウムが入っていた。
一方、臭化物イオンが0.024molあったので、臭化カルシウムCaBr2分子内のCaとBr原子の個数比が1:2であることに注意して、臭化カルシウムCaBr2由来のカルシウムは0.024×1/2molあったことがわかる。カルシウムのうち、残りが塩化カルシウムCaCl2由来なので、
8.6/172-0.024×1/2=0.038mol
したがって、④が正解。
問7 生活に関わる物質の記述として下線部に誤りを含むものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 8
① 二酸化ケイ素は,ボーキサイトの主成分であり,ガラスやシリカゲルの原料として使用される。
② 塩素は,殺菌作用があるので,浄水場で水の消毒に使用されている。
③ ポリエチレンは,炭素と水素だけからなる高分子化合物で,ポリ袋などに用いられる。
④ 白金は,空気中で化学的に変化しにくく,宝飾品に用いられる。
正解は①。ボーキサイトの主成分は酸化アルミニウム(アルミナ)である。他の文章は全て正しい。
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